ほぼ二年ぶりの練習報告をさせていただきます!

9月22日の演奏会まで残すところ6週間となりましたので、毎週の練習にも段々熱がこもってきました。

今日は毎週の定例練習としては初めて3曲(モテット第一番、カンタータ第38番・140番)を通して演奏しました。いつもは細かく区切って練習しているので、曲の流れが体験でき、また音取りに不安な個所が一通り分かって自習するときの参考になるなど、得るものが多い練習でした。

一方、今日の練習の前半はモテットの最終部分の「アレルヤ」を徹底的にさらって細かいパート別の練習もしたので、密度の濃い学習もできました。

ということで、マクロとミクロ両面からアプローチするとそれぞれ違った学びができます。

それにしても、3曲ともそれぞれ曲想や性格が異なり、バッハの世界の多様性に触れられた2時間だったと思います。

あと5回の定例練習と3回のオーケストラリハーサルでさらに完成度を高めたいですね!

2018/08/11 21:54

9月30日に行われる私たちの演奏会で取り上げられる曲の歴史的背景を渡辺義忠先生が分かりやすく解説する催しが巣鴨教会で行われました。団員約20名、一般の方々20名あまりのご参加をいただき、お茶菓子の休憩を挟んで2時間、ルターゆかりの賛美歌第267番「神は我がやぐら」やトーマス・タリスの賛美歌第36番「この日の恵みを今こそたたえめ」などを歌いながら、波乱の宗教改革の時代を生きたドイツや英国の人々の心に思いを寄せつつ、あっという間の2時間となりました。

ドイツ東部のヴィッテンベルグ大学の神学教授だったマルティン・ルターが同地の教会に「95か条の論題」を打ちつけたのが1517年。カトリック教会で横行していた贖宥状の販売にルターが異議を唱えてから今年でちょうど500年が経ちます。この「95か条の論題」事件を皮切りにアルプス以北のヨーロッパで宗教改革運動が進められ、カトリック教会に対抗する形でプロテスタント諸教会が創られました。

ルターは音楽にも造詣が深く、自ら多くの賛美歌を作曲してそれらに民衆にも分かるドイツ語の歌詞をつけましたが、なかでも最もよく知られたものに「神は我がやぐら」があります。ルターから時代を下ること約200年後にバッハは「神は我がやぐら」を元に壮麗な対位法と和声を添えてカンタータ80番を作曲し、宗教改革の精神をドイツ語の歌詞と音楽に再現しました。

イギリスではルターに遅れること数十年、ヘンリー8世の離婚問題を皮切りに英国国教会がカトリック教会から分離する形で宗教改革が進められましたが、17世紀に入って欽定訳聖書が出されて民衆の言葉である英語で聖書が読めるようになり、クロムウェルの清教徒革命を経て徹底したカトリック教会からの分離が進められました。

バッハと同年生まれのヘンデルはドイツからイタリア経由、イギリスに渡って英国王室のお抱え音楽家として器楽とオラトリオに不朽の名作を送り出しました。ヘンデルは16世紀に国教会とカトリック教会の双方の君主に仕えた音楽家、トーマス・タリスが確立した英国独自の宗教合唱曲の伝統を渡英していち早く吸収し、「シャンドス・アンセム」を作曲したと言われています。

2017/08/31 08:45

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練習日誌を一回分(10月29日)休んでしまいましたが、年中無休を標榜するカンムジです、練習そのものは渡辺先生のもとしっかりしました。カンタータ第80番の第一曲をゆっくり演奏しながら各パートの音取りをひとつずつ確実にものにしていく、という地道な練習でした。正直言ってこういった練習はある意味、砂を噛むような味気なさを感じるのですが、音取りが出来て初めて自信を持って表現やダイナミズムといったワンランク上の練習ができるので、決して疎かにできません。

 

さて、11月5日の課題曲はカンタータ80番の第一曲全曲、渡辺先生と小川先生に分かれて指導を受けました。こういうパターンで練習するときは通常、渡辺先生が人数の少ない男声を礼拝堂控室でご自身でキーボードを弾きながら、小川先生が人数の多い女声を礼拝堂で渡辺悦子さんのピアノ伴奏をいただきながら別々に指導していただきます。今回は渡辺先生が控室でソプラノ(その時は小川先生はアルトと男声)、続いてソプラノに代わってアルト(その時小川先生はソプラノと男声)を指導されました。

 

大人数の小川先生によるレッスンはいつもながらドイツ語の発音と表現に重点を置いたものでした。表現としては、曲の前半、神への賛美の部分では笑顔で歌い、60小節からは腹から声を出して堂々とした悪魔の様子を表現し、90小節からは恐ろしげに悪魔の武器を表現する、といった感じです。細かい発音や発声技術については以下の通りでした(小節数はバスが基準)。

  • 8小節:歌い出す前に十分息の準備をする。最初のフレーズは息が長いので(カンニングブレスは可としても)最初に浅い息だとあとが続かなくなる(この点は全てのパートについて)。
  • 12小節:Wehr の母音は「イエーァ」と綴りからくる「エ」だけでなく「イ」の要素を入れる(この点は全てのパートについて)。
  • 28小節:ein gute Wehr und Waffen の下降音形はレガート(なめらかな表現)を心がける。
  • 38小節:hilft の語尾子音 [ft] ははっきりと発音する(この点は全てのパートについて)。
  • 72小節以降:Ernst の語尾子音 st ははっきりと発音する(この点は全てのパートについて)。
  • 79小節から80小節:ここはテノールとバスがそれまでと違って同じリズムを刻むのでお互い意識しあって。
  • なお、mit Ernst ers itzt meint は子音が多いので我々日本人にはつらいところなので、念入りに発音を指導されました。以前にもErnst」と「ers」は [er] が同じつづりでも、前者が「エァンスト」後者が「イァス」に近い、と指導された内容が繰り返されました。
  • 103小節:seinsgleichen の真ん中の s は [ツ]と発音する(この点は全てのパートについて)。

 

さて、渡辺先生によるソプラノの「特訓」は以下の通りの実況中継さながらの報告をいただいています。

  • Einの最初の母音を引き締まった響きで。平べったくならないこと。最初の二分音符は八分音符の刻みを意識して歌い始めること。
  • 5ページ 912小節 unt Waffenのリズム、タイで遅れるので気を付けること。
  • 7ページ 19小節 Gotttをはっきり。
  • 9ページ 2527小節 ein feste Burg ist legatoで歌う。
  • 10ページ 2930小節 Wehr erの発音は開いて。unt Waffenはゆっくりしない。
  • 11ページ 35小節 er : eの口形でハミング、その後少し開いて発音。
  • 12ページ 39小節 betroffen trを音符より前に発音する。
  • 17ページ 5859小節 音程の練習 レのオクターブ・ドのナチュラル・ドのシャープ
  • 18ページ 66-67小節 二分音符と続く全音符は拍のポイントを感じて伸ばす。
  • 21ページ 7576小節 Ernststの語尾がなくならないように。
  • 24ページ 87-88小節 viel List Lがふたつ重なるので発音に注意。
  • 27ページ 99小節 下りの半音が下がりすぎるので注意。
  • 28ページからのaufははっきりと発音する。
  • 29ページ 107-109小節 テンポが遅れないように。
  • 30ページ 113小節 3泊目からritardando 最後の小節はアルト、テノールを良く聴いて。

 

ということで、さすが渡辺先生、とても細かく指導していただきました。「言葉がついて行かないところがたくさんありましたので、このパート練習はとても有意義な練習でした」とのことです。

 

最後は第1曲と第5曲を最初から最後までパートがバラバラになるように並んで(両隣に自分と同じパートの人がいない)練習し、各人が自分の出来具合を確かめる練習をしました。本番もこういう並び方をしてはどうか、という提案も出ています。本当にそうなってもまごつかないように、さらに練習を重ねて自分のパートはしっかり歌えるようにしたいですね。

 

(記録:調、協力:川畑)

 

2016/11/10 22:36
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1022日の練習は小川先生による準備体操と発声練習のあと、男声(渡辺先生)と女声(小川先生)に分かれてパート練習をしたのち、全体で合同練習をしました(渡辺先生)。練習箇所はカンタータ80番第1曲の後半、60小節以降でした。

曲の前半、59小節までは神様が堅い砦として私たちを守ってくださることへの壮麗な賛美が繰り広げられましたが、後半の60小節からはそれとうって変わって、悪魔が私たちのこころを様々な手段を使ってねらってくる様子をバッハは長調とも短調ともつかない、半音進行のまがりくねった旋律をフーガ展開することによって表現しています。

実は「悪魔」という言葉は歌詞につかわれておらず、その性格を5行目 Der alte boese Feind (あの古くて悪しき敵は)という歌詞で表現しています。これが60小節からバスでまず歌われ、テノール、アルト、ソプラノと次第に高音のパートに受け継がれるのですが、これが何とも憎々しげな感じの旋律で、一筋縄で行かない悪魔の性質を存分に表現したものとなっています。

旋律だけではなく、6行目の歌詞 mit Ernst ers itzt meint (いまや死に物狂いのあがきでもって)は日本人にとって(悪魔的に)苦手なnsttztntといった連続する子音が次から次へと出てきて舌を噛みそうになる箇所です。「Ernst」と「ers」は [er] が同じつづりでも、前者が「エァンスト」後者が「イァス」に近いとのこと。小川先生が特に注意を求められたのが [t] の発音をハッキリさせることでした。練習でもリハーサルでも本番でも小川先生が我々と一緒に歌われるときは明快な [t] 音が小川先生から発せられるのを団員は聴いているはずですが、一人でもあれだけ聴こえるのですから全員がやれば凄いことになると思います。

なお、小川先生による女声のパート練習では先週に引き続いてテーマを担当するパートが立って歌うようにしましたが、そうすることで目や耳からだけでなく、身体で曲の流れがつかみやすくなりました。

男声のパート練習では特にテノールの半音進行が多くて音程を正確に押さえるのに苦心しました。バスも2122頁や2324頁といった頁めくりの箇所で8分音符の細かい動きがあって暗譜しないとついていけないところがあります。この曲は音符が多いせいかわずか8小節で頁をめくらなければならないので、オチオチしていられません。

また、バッハは同じ曲のなかで似たようで少し違う音程を散りばめています。聴いている分には変化があって面白いのでしょうが、演奏する側としてはこれが落とし穴になります。例えば、アルトの20小節目のA – D4 72小節目のA – E5度の音程の違いなど。

こういった細かい箇所を全員がひとつずつマスターしていって来秋のステージに自信をもって立てるようにしたいと思います。

(記録:調、協力:佐久間)

2016/10/27 10:01
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今日の練習は小川明子先生の指導をいただきました。普段指導いただいている渡辺先生は元々はオルガニストですので、合唱曲といっても楽曲へのアプローチは鍵盤楽器を演奏する観点からされるようです。具体的には楽曲の和声進行に基づいて各パートの音程やリズムの調和を厳格に指導をされます。一方、小川先生は声楽家として合唱曲にアプローチされるので歌い手として自然な歌い方を強調されます。やや極端な形容の仕方かもしれませんが、渡辺先生は頭脳的なアプローチ、小川先生は身体的なアプローチ、と言えましょうか。同じバッハの曲でもアプローチの仕方によって結果として出てくる演奏に大きな違いが生じるのは興味深いところです。

さて、今日はカンタータ80番から先ずは第5曲の斉唱をさらいました。その時小川先生が強調されたのは「身体全体で喜びを表現すること」でした。この曲では歌詞の一行ごとに合唱団が歌うのをぬってオーケストラが華やかな間奏を入れていくのですが、その一行を歌い終わるたびに我々は笑顔で「万歳」をして喜びを身体で表現しようと先生は提案されました。万歳するとともに歌い終わりに息を吸ってしっかりと一行ごとの終止形を表現する。そうすることによってメリハリのある音楽づくりができる、という教えでした。

第8曲のコラールでは最後の2小節の das Reich muss uns doch bleiben を何度もさらいました。小川先生は最後の言葉、bleiben(留まる)の "i"をしっかり息を出しながら発音することを強調されていました。素人の集団でもこれだけ同じフレーズを何度もさらうとだんだん文字通り「息」が合ってきて、最後のニ長調のハーモニーに倍音が入ったかのように聴こえたそうです。「そうです」というのは歌っている当の筆者には全く分からなかったのですが、小川先生を始め何人かの団員は高いF(第三音)の倍音が聴こえたとのこと。何とも不思議ではあります。

最後に第1曲の合唱曲の前半、59小節目までをさらいました。この曲の前半は4行からなる歌詞に基づきますが、そのうち1行目(Ein feste Burg ist unser Gott 神は私たちの堅い砦です)と3行目(Er hilft uns frei aus aller Not 神は私たちをあらゆる苦難から助け出してくださる)にルターのコラールの基本テーマが充てられています。このテーマは4つのパートが代わるがわる担当して目まぐるしく出たり入ったりするのですが、この出入りの精妙さがこの曲の聴きどころとなっています。ここで小川先生は面白い指導をされました。この基本テーマを歌っているパートがその時だけ立ち上がるように指示されたのです。逆に言えば、第2行と第4行を歌っているときは座るようにされました。具体的には第1小節から第3小節がテノール、第3小節から第6小節がアルト、第6小節から第8小節がソプラノ、第8小節から第11小節がバス、第13小節から第16小節がアルトが立って歌う、といった具合です。

面白いもので、「さあ、テーマを歌うぞ」と思いながら立ち上がって実際に歌うと気合が入ってしっかりとテーマが口につきます。そしてテーマを歌い終わって対旋律を歌うために座ると声量も自然と落ちつきます。何よりも面白いのはテーマを歌っているのがどのパートなのか視覚的に分かるので、刺激が耳からだけでなく眼からインプットされて、曲の立体的な理解が進んだことでした。練習後、ピアノ伴奏の渡辺悦子さん曰く、「いつものカンムジと比べて10歳から20歳若返ったかのように生き生きとした声が、テーマが繰り返されるたびに湧き出てきてすごく楽しかったし、ピアノ伴奏をつけやすかった」とのこと。こんな事ってあるものなんですね。

また大変感心したのは、小川先生がこの練習方法をあらかじめ計画されたわけでもなく、その場のインスピレーションで発案されたことです。こういったところに小川先生の指導者としての才能を感じたのは筆者だけではなかったと思います。何はともあれ、楽しい2時間でした。

写真は前回の演奏会本番です。

2016/10/19 09:44
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