10月22日の練習は小川先生による準備体操と発声練習のあと、男声(渡辺先生)と女声(小川先生)に分かれてパート練習をしたのち、全体で合同練習をしました(渡辺先生)。練習箇所はカンタータ80番第1曲の後半、60小節以降でした。
曲の前半、59小節までは神様が堅い砦として私たちを守ってくださることへの壮麗な賛美が繰り広げられましたが、後半の60小節からはそれとうって変わって、悪魔が私たちのこころを様々な手段を使ってねらってくる様子をバッハは長調とも短調ともつかない、半音進行のまがりくねった旋律をフーガ展開することによって表現しています。
実は「悪魔」という言葉は歌詞につかわれておらず、その性格を5行目 Der alte boese Feind (あの古くて悪しき敵は)という歌詞で表現しています。これが60小節からバスでまず歌われ、テノール、アルト、ソプラノと次第に高音のパートに受け継がれるのですが、これが何とも憎々しげな感じの旋律で、一筋縄で行かない悪魔の性質を存分に表現したものとなっています。
旋律だけではなく、6行目の歌詞 mit Ernst ers itzt meint (いまや死に物狂いのあがきでもって)は日本人にとって(悪魔的に)苦手なnstやtztやntといった連続する子音が次から次へと出てきて舌を噛みそうになる箇所です。「Ernst」と「ers」は [er] が同じつづりでも、前者が「エァンスト」後者が「イァス」に近いとのこと。小川先生が特に注意を求められたのが [t] の発音をハッキリさせることでした。練習でもリハーサルでも本番でも小川先生が我々と一緒に歌われるときは明快な [t] 音が小川先生から発せられるのを団員は聴いているはずですが、一人でもあれだけ聴こえるのですから全員がやれば凄いことになると思います。
なお、小川先生による女声のパート練習では先週に引き続いてテーマを担当するパートが立って歌うようにしましたが、そうすることで目や耳からだけでなく、身体で曲の流れがつかみやすくなりました。
男声のパート練習では特にテノールの半音進行が多くて音程を正確に押さえるのに苦心しました。バスも21・22頁や23・24頁といった頁めくりの箇所で8分音符の細かい動きがあって暗譜しないとついていけないところがあります。この曲は音符が多いせいかわずか8小節で頁をめくらなければならないので、オチオチしていられません。
また、バッハは同じ曲のなかで似たようで少し違う音程を散りばめています。聴いている分には変化があって面白いのでしょうが、演奏する側としてはこれが落とし穴になります。例えば、アルトの20小節目のA – Dの4度 と72小節目のA – Eの5度の音程の違いなど。
こういった細かい箇所を全員がひとつずつマスターしていって来秋のステージに自信をもって立てるようにしたいと思います。
(記録:調、協力:佐久間)