練習日誌を一回分(10月29日)休んでしまいましたが、年中無休を標榜するカンムジです、練習そのものは渡辺先生のもとしっかりしました。カンタータ第80番の第一曲をゆっくり演奏しながら各パートの音取りをひとつずつ確実にものにしていく、という地道な練習でした。正直言ってこういった練習はある意味、砂を噛むような味気なさを感じるのですが、音取りが出来て初めて自信を持って表現やダイナミズムといったワンランク上の練習ができるので、決して疎かにできません。
さて、11月5日の課題曲はカンタータ80番の第一曲全曲、渡辺先生と小川先生に分かれて指導を受けました。こういうパターンで練習するときは通常、渡辺先生が人数の少ない男声を礼拝堂控室でご自身でキーボードを弾きながら、小川先生が人数の多い女声を礼拝堂で渡辺悦子さんのピアノ伴奏をいただきながら別々に指導していただきます。今回は渡辺先生が控室でソプラノ(その時は小川先生はアルトと男声)、続いてソプラノに代わってアルト(その時小川先生はソプラノと男声)を指導されました。
大人数の小川先生によるレッスンはいつもながらドイツ語の発音と表現に重点を置いたものでした。表現としては、曲の前半、神への賛美の部分では笑顔で歌い、60小節からは腹から声を出して堂々とした悪魔の様子を表現し、90小節からは恐ろしげに悪魔の武器を表現する、といった感じです。細かい発音や発声技術については以下の通りでした(小節数はバスが基準)。
- 8小節:歌い出す前に十分息の準備をする。最初のフレーズは息が長いので(カンニングブレスは可としても)最初に浅い息だとあとが続かなくなる(この点は全てのパートについて)。
- 12小節:Wehr の母音は「イエーァ」と綴りからくる「エ」だけでなく「イ」の要素を入れる(この点は全てのパートについて)。
- 28小節:ein gute Wehr und Waffen の下降音形はレガート(なめらかな表現)を心がける。
- 38小節:hilft の語尾子音 [ft] ははっきりと発音する(この点は全てのパートについて)。
- 72小節以降:Ernst の語尾子音 st ははっきりと発音する(この点は全てのパートについて)。
- 79小節から80小節:ここはテノールとバスがそれまでと違って同じリズムを刻むのでお互い意識しあって。
- なお、mit Ernst ers itzt meint は子音が多いので我々日本人にはつらいところなので、念入りに発音を指導されました。以前にも「Ernst」と「ers」は [er] が同じつづりでも、前者が「エァンスト」後者が「イァス」に近い、と指導された内容が繰り返されました。
- 103小節:seinsgleichen の真ん中の s は [ツ]と発音する(この点は全てのパートについて)。
さて、渡辺先生によるソプラノの「特訓」は以下の通りの実況中継さながらの報告をいただいています。
- Einの最初の母音を引き締まった響きで。平べったくならないこと。最初の二分音符は八分音符の刻みを意識して歌い始めること。
- 5ページ 9-12小節 unt Waffenのリズム、タイで遅れるので気を付けること。
- 7ページ 19小節 Gottのtをはっきり。
- 9ページ 25-27小節 ein feste Burg ist はlegatoで歌う。
- 10ページ 29-30小節 Wehr のerの発音は開いて。unt Waffenはゆっくりしない。
- 11ページ 35小節 er : eの口形でハミング、その後少し開いて発音。
- 12ページ 39小節 betroffen のtrを音符より前に発音する。
- 17ページ 58―59小節 音程の練習 レのオクターブ・ドのナチュラル・ドのシャープ
- 18ページ 66-67小節 二分音符と続く全音符は拍のポイントを感じて伸ばす。
- 21ページ 75-76小節 Ernstのstの語尾がなくならないように。
- 24ページ 87-88小節 viel List Lがふたつ重なるので発音に注意。
- 27ページ 99小節 下りの半音が下がりすぎるので注意。
- 28ページからのaufははっきりと発音する。
- 29ページ 107-109小節 テンポが遅れないように。
- 30ページ 113小節 3泊目からritardando 最後の小節はアルト、テノールを良く聴いて。
ということで、さすが渡辺先生、とても細かく指導していただきました。「言葉がついて行かないところがたくさんありましたので、このパート練習はとても有意義な練習でした」とのことです。
最後は第1曲と第5曲を最初から最後までパートがバラバラになるように並んで(両隣に自分と同じパートの人がいない)練習し、各人が自分の出来具合を確かめる練習をしました。本番もこういう並び方をしてはどうか、という提案も出ています。本当にそうなってもまごつかないように、さらに練習を重ねて自分のパートはしっかり歌えるようにしたいですね。
(記録:調、協力:川畑)