今日はカンタータ80番の冒頭の長い合唱曲「Ein feste Burg ist unser Gott 神はわれらの堅い砦」の前半を初めて練習しました。この合唱曲だけで61ページある全曲の28ページを占め、114小節、演奏時間も6分から7分かかる長大なものです。バッハの宗教カンタータでは最初の曲が長い合唱曲となっているケースが多いのですが、80番の合唱曲は長いだけでなく、複雑なフーガが壮麗な曲想で展開されています。

先ずはドイツ語の発音から小川先生が指導されました。小川先生のドイツ語は若い頃ウイーンに留学された本場仕込みのものですので、私たちのドイツ語の発音指導はもっぱら小川先生が担当されています。2行目の「Ein gute Wehr und Waffen (神は)良き守りで良き武器です」の "Wehr" は「ヴェア」と「ヴィア」の中間、むしろ「ヴィア」に近いとのこと。

ルターのコラールのテーマをテノールが歌いだし、アルト、ソプラノ、バスがそれぞれ2小節半ずつ遅れてテーマを歌いだすのですが、テノールとソプラノがコラールのテーマそのものを歌うのに対して、アルトとバスはその4度下(レに大してラ)で対旋律を歌いだします。テノールとソプラノ、アルトとバスはそれぞれ組になってスタートするものの、すぐに4つのパートがそれぞれ独自の動きをするようになり、一見バラバラに動いているようで和声進行の上では統一の取れた関係性をお互い保ちながら曲がすすむ有様は見事です。実際のところは歌う身にとっては(今のところは、としましょう)自分のパートを追いかけるのがやっとですが。

歌詞については、大まかに言って一行ごとに同じ歌詞を4つのパートが歌うのですが、フーガの場合はパートごとに旋律がずれて歌われるので、同じ言葉を別々のタイミングで発音することになり、演劇で言えばあたかも4人の人が同じせりふをバラバラのタイミングで話しているかのような印象を与えます。これがフーガを器楽ではなく、声楽で聴く面白さにつながっています。全体では「神は堅い砦だ!」と叫んでいる群衆をばらすと、ある人たちが「神は」と言っている横で「堅い」と言っている人たちがいて、別に「砦」と叫んでいる人たちもいる、といった感じです。

バッハの天才はこの一見バラバラな動きに統一された方向性を与えていることにあります。この統一感は和声進行によって与えられます。これを体感して歌うためには自分のパートだけでなく、他のパートも何を歌っているのか分かっていなければならないことになります。渡辺先生はしばしば4つのパートをひとつずつ全員に歌わせますが、それはそのためではないかと思います。

今日の練習で小川先生は「一人ひとりがお互いに『合わせる心』がなければ、いくら指揮を見ても息の合った合唱はできないよ」と指摘されました。至言ですね。自分のパートをしっかり歌いつつも他のパートに「合わせる心」を持つ。言うのは簡単ですが、実行するとなるとつい自分のパートを一生懸命追いかけることで終わってしまいがちです。考えてみれば、これは人生を生きていくうえでの叡智だな、と思ったりします。家庭や職場でのハーモニーは存外、合唱のハーモニーと同じ心構えで実現するのかもしれません。

2016/10/02 22:27

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